ポエム

わたしは今、崖の上に立っている。
少し強い風が吹けば、
あるいは誰かにそっと背中を押されたら、
わたしは、
ついに、
アイフォンを買ってしまいそうだ。
必要に迫られているわけではない。
旅に出る予定があるわけでもない。
ただなんとなく、しかし熱烈に、
スマートフォンを持ちたいと思ってしまった。
そうは言っても手持ちの携帯を手放すことはできないし
口だけで
そう、口だけで
きっと買わないこともわかっている。
たとえていうならば
ひさしぶりに会った友達が
社会人のスポーツサークルみたいなのに入っていて
「楽しいよー、出会いも増えるよー」と
明るい口調でキャッキャ話すのを聞きながら
「いいなあ、わたしもやりたいなあ」と
口ではうらやみつつも
きっとやらないんだろう、
きっとできないんだろうと、薄く浅く絶望するような。
なにかをしたいけれど、
きっとわたしはやらないだろうと思う瞬間に訪れる
あのさみしさの正体はいったいなんなのだろう。
アイフォンはお金を出せば買えます。
新しいコミュニティに飛び込む勇気もいらない、
どっちかといえばひとりのわたしに寄り添ってくれる機械なのに
わたしは何を言ってるんだろうか。
もうちょっと経ったら
アイフォンがドコモでも使えるようになったら
もっと便利で安くなったら
わたしがスマートフォンに対して素直になったら
たらたらたらたら
そうやってわたしはまたいいわけを重ねていく。