SADSONG FOR UGLY DAUGHTER

ウーマンリブVOL.12
「SADSONG FOR UGLY DAUGHTER」@本多劇場
作・演出:宮藤官九郎
出演:松尾スズキ 宮崎あおい 田辺誠一 荒川良々 宍戸美和公 少路勇介 矢本悠馬 宮藤官九郎 岩松了

わたしにとってはひさびさのウーマンリブ。6/18ソワレを観てきました。
タイトルバックがものすごくかっこよくてしびれた。あおいちゃんが家のふすまをがらっと開け、無気力な声で「ただいまー」と言いながらかばんを床にどんと置いた瞬間に暗転、家一面&あおいちゃんのTシャツに書かれた「SADSONG FOR UGLY DAUGHTER」の色とりどりの文字がブラックライトで浮かび上がって、ZAZENの音楽イン。かーっこいいー!わたしの中のベストタイトルバック賞は新感線の吉原御免状なんだけど、それに次ぐぐらいしびれたわあ。
わたしあまり七人の恋人みたいにコント集っぽいのよりもこういうストーリーもののほうが好きだから、今回はすごく見ごたえがあった。でもわたしの受け皿が小さいせいか、ウーマンリブにしろ本公演にしろ、瞬間瞬間でぐっとくることは何度もあるんだけど、結局どう受け止めていいのかわからぬまま幕切れになってしまう。今回もそうだった。もう1回見たらわかるかな、もうちょっとで手が届くって瞬間にひらりとかわされるような、そんなもどかしさがある。だからあんまり安易に「こういうことだったのかな」って言えない。なんとなく、皮膚感覚でせつなさだけ感じとる。弟と良々のシーンでそういうところがあって、ひたりたかったのにすぐ良々にどーんと突き飛ばされた。あっいいこと言ってるって思うとすぐ茶化されたりする。恥ずかしがり屋さん。
弟くんは新人なのだろうか。ほんとに学生っぽい感じがして、そこがすごく上手だった。確かに源ちゃんとかにはもうこういう役やれないだろうな。幕があくと登場人物がオナってるって、裏切りの町を思い出させた。あれもそういう場面から始まるお芝居だった。
岩松さんにエチュードとかワークショップとかチェーホフのことしゃべらせる宮藤ちゃんってものすごくドエスだなあって思った。どんな気持ちで岩松さんは台本を読んだんだろう。あおいちゃんに「かもめ」を演じさせる場面で「わたしはかもめ、いいえ、わたしは女優!」という有名なセリフを「かもめじゃなくたっていいんだ!」「じゃあ唐揚げは?」「……唐揚げでもいい!」「わたしはかもめ、いいえ、わたしは唐揚げ!!」「ちょっと意味違ってきちゃったけどね」(意訳)っていうやり取りがものすごくおもしろかったです。
あとあおいちゃんとタナベーが歌うシーン、ああ宮藤ちゃんどうしてもあおいちゃんの歌を入れたかったんだなあ、もうまんまあのCMの歌い方だよ!「ヒマラヤほどーのー!」と一緒だよ!あおいちゃんは舞台女優としてもまったく違和感がなくてほんとうにすばらしかった。ちゃんとおなかから声が出てるし、ちょっと特殊な宮藤ちゃんの世界にとてもなじみがいいのだ。頼もしい!あんなに細っこいカラダのどこからそんなパワーが!踊るあおいちゃんかわゆかったなあーもうほんとnynyしながら目を細めたよ!そしてタナベーはもう飛び道具でしかないよ!普通の芝居見ると笑ってしまうという弊害が出てるよ!
そうそう、あと、松尾ちゃんがすごいしゃべってる!ちょうがんばってる!って感動した。宮藤ちゃん容赦ないからなあ。変な体操をとぼけた顔で踊る松尾ちゃん。おどける松尾ちゃん。よく動く松尾ちゃんを観られるのはウーマンリブだけ!カラダには気をつけて松尾ちゃん!
大人関係の芝居にはもれなく凶器が出てきてそのほとんどが鉄砲であるため、びびりなわたしは発砲の瞬間を見極めて耳をそっとふさぐのだけど、今回なんか特に音がでかかったような気がするなあ。準備してたのに椅子から0.05ミリぐらい飛び上がってしもたよ。あっけなくあおいちゃんが撃たれて、撃たれた姿のまま稲庭うどん食べて、「あーおなかいっぱい」ってそのまま仰向けに倒れて死んで終わり。そうそう、宮藤ちゃんってお芝居だと乱暴に終わるよねって思い出してにんまりした。
少路くんの執拗な鈴木雅之とか松尾ちゃんが近づくたびにうなりを上げる空気清浄機とか*1まったく本編と関係ないTENGAコスプレの良々とか、過剰なまでの天丼加減がほんとうにたまりません。宮藤ちゃん演じる弟の担任だって、あんなにびしょぬれになる必要ないじゃん!なんでみずからあんなに濡れるんだ!サービス?サービスなの?(この人の芝居に「必要」という言葉が意味を持たないことは重々承知のうえで問い詰めたい
今回わたしが最も爆笑したのは、岩松さんの「趣味が笛なんです」という前振りがあったうえで、いきなり屋根の上で横笛を吹きだしたシーンです。ええー!笛って横笛なの!?縦笛じゃないの!?っていう。どうでもいいけど思いこみとどうでもいい驚き。この無意味さがたまりませんね。
ひさびさにだらだらと書いちゃった。おもしろかったです。でもやっぱり鉄砲こわい……

*1:これ実話だ!ってうれしくなった。昔松尾ちゃんがなにかで書いてるの読んで爆笑した覚えがあるんだけど、宮藤ちゃんもどうしてもこれネタにしたかったんだね