ピヨ丸、ムスカ化計画

ハロー新しいわたし。
うすぼんやりともやがかかったような時をいくらか経て、だんだんと視界がはっきりしてくる。あれ?今かけてる眼鏡は保護用のだから度は入ってないはず。でも信じられないからはずしてみる。ああ、あんな遠くの字が読めるよ。読める、読めるぞおおおお!
ムスカにならざるを得ない。ずっと前にコンタクトがドライアイで合わなくなってから、必要な時に眼鏡をかけるぐらいの視力だった。知ってる土地は裸眼で歩けるけど、行きかう人の顔はぼやけるし迷っても案内板がよく見えない。だからわたしは自然とうつむきがちに歩くようになっていた。知り合いとすれ違ってもあいさつできずに失礼を働いてしまうと思ったから。
眼鏡かけてなさいよと親は言う。でもとにかく似合わないし、鼻ペチャなのですぐばあさんみたいにずり落ちる。それに目が、目がやたら疲れるんだ。
何かを観に行く時はもちろん眼鏡をかける。でも双眼鏡も覗きたい。いちいちはずすなんてめんどくさいしアイドルの一挙手一投足を見逃すわけにいかないわたしは、眼鏡の上から双眼鏡をのぞいてなんとか頑張っていた。好きな人を凝視しようと思えば自然と力が入る、よって眼鏡に顔が食い込んでいく、いたいいたいいたい…そして低い鼻筋にはっきりとつく眼鏡の跡。しかもその跡は老化のためなかなか消えてくれやしない。
いっそ眼鏡やコンタクトがないと生活できないほど目が悪ければなんとか腹をくくることができた。でもこの中途半端な視力が逆にストレスになり、経験者がまわりに何人がいたこともあってわたしは次第に考え始めるようになった。温泉だって夏フェスだって、突然芸能人が道端に現れたってばっちり対応できる、レーシックという魔法を使えば!!
そしてわたしはお金で魔法を買った。
値段も幅があったけど、目のことだからと安心料でお高めのプランにした。やる前は多少不安があったけど、施術例の多さと友人の勧めと、なによりクリニックの盛況っぷりがわたしの背中を押した。手術当日、翌日検診に来ていた前職の社長とばったり出くわして「いいよー!世界が変わるよ!痛みなんて全然ないよ!」という喜びの声がさらにわたしを前向きにさせる。仕事の時にはまったく役に立たなかったけどとりあえず今回はグッジョブだよ社長!
手術ったって流れ作業みたいなもんで、「ご案内しますねーそのまま仰向けになってくださいー消毒しますねー目を固定しますー緑のランプを見ててくださいねーだんだんぼやけていきますー真っ暗になりますが大丈夫ですー」「20秒ー」「はい正常に終わりましたーレーザー照射しますー」「5,4,3,2,1」「はい終了ですー」
心構えなんかしてるヒマ全然ない。あっという間に終わる。レーザ―のときだけ焼けたような匂いするけどそれ耐えればなんてことない。目をぎゅって押される痛みはちょっとあるけどそれだけで、何も怖いことなんてなかった。*1
いつまで生きられるかわからんけど、見えないという煩わしさから解放されたわたしは少し前向きになれた気がする。世界ってこんなに明るかったんだ、ちっとも知らなかったよ。いくら目を使う仕事してても目がいい人はいいわけで、同じ人間なのにずるいうらやましいって猫背気味で暮らしてきたけど、これからは「見えるもんね!」って背筋伸ばして生きていける。ような気がするんだ。
見えるようになったから、次はモテるだけだ。地味にへこむことがまた最近ちょくちょくあるけどそんなの知らない!どうでもいい!見えない知らない聞こえない!モテる!ちゃんとモテる!だいじょうぶ!!
(振り乱した髪を整えながら)というわけで見える人生を手に入れたい方、紹介券ありますのでぜひご一報を!ない人あるよーない人あるよー(ダミ声

*1:ピヨ丸は変なとこで肝が据わってるので病院で緊張したことがほとんどありません