大人買い

ひさしぶりに友達のMちゃんと会って、いろんな話をした。わたしが今どんな状態なのか、どうしてこうなってしまったのか、つたない言葉で全部伝えた。あいづちの端々からわたしを親身に思ってくれていることが伝わってきて、とても救われた気分になった。読書家のMちゃんに「なんかおもしろい本読みたいなあ…」とつぶやいたら、「本屋行こう!大人買いしよう!」と言われ、23時までやってる啓文堂に「都会っていいね!眠らない街だね!」などと妙なテンションで突入した。
あのときも、自分の物語からなんとか逃れたくて他人の物語に熱中した。今は落ち着いてきたけれど、やはり時たまフィクションの世界に救いを求めてしまう。それが期せずして自分とだぶってしまうとしても、少しでも遠くに行きたいという気持ちは変わらなかった。
「そういえば加藤千恵が小説を書いたよ」と、彼女はいつの間にかどこかの書棚から1冊抜き出してわたしに差し出してくれた。

ハニー ビター ハニー (集英社文庫)

ハニー ビター ハニー (集英社文庫)

ついこないだ高校生歌人としてセンセーショナルなデビューを果たしたと思っていたのに、もう27歳だって。そりゃあわたしも年を取るわけだよ。わたしは彼女のみずみずしく甘く、そして少し残酷な短歌が大好きだったから、いつもは苦手な恋愛の短編集でもむさぼるように読んだ。ざくざく刺さるように痛く、なんどもわたしの気持ちはあちら側の世界に潜り込んでしまったけれど、ほんとうに面白かった。この人の感性はほんとうに信頼できると、なぜかそんな偉そうなことを思ってしまった。
今は読んだ人みんな大絶賛のこれを読んでいる。
まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

評判に違わずちょうおもしろい。わたしこの人とタメなのだけど、直木賞を獲ったときはなんとも思わなかったのに、本屋に積まれていたこれ↓
神去なあなあ日常

神去なあなあ日常

の帯を宮崎駿が書いてるのを見たとき、烈火のごとく怒りがこみ上げてきた。ちょうくやしい!別に同じ土俵にちっとも立ててないけど、このくやしさはいったいなんなのかしら!ハンカチきーっ!!
よく見れば版元が徳間書店なのでむべなるかなと今はちょっと冷静な気持ちでいるけれども、でもやっぱり駿は別ではないか。反則だよそんなの。いいな。わたしも書いてほしいな(著作がありません
Mちゃんはいろいろおすすめを教えてくれる。わたしは話題になっている本も全然読んでおらず、自分の読書量の低下を嘆くばかりだったので、調子に乗ってたくさん買ってしまった。
八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる

きいろいゾウ (小学館文庫)

きいろいゾウ (小学館文庫)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

第七官界彷徨 (河出文庫)

第七官界彷徨 (河出文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

ちなみにいちばん落ちていた時期に、わたしはこれを読んでいた。
真鶴 (文春文庫)

真鶴 (文春文庫)

静かにねじれていく世界がとても心地よくて、冷たい水にたゆたうように最後までごくごくと読んだ。
本はいいな。どんどん読むぞ。昔読んだ日本文学とかも読み返したい。逃げ込むためじゃない、新しい扉を開くために。