一財産を成す犬

「人間とは思えない回復力だ」

この医者のひとことで、これまでの謎が一気に解明された。
つまりお父さんは家族以外の人間には犬と思われていない。だから校長先生にもなれるし及川さんから「お嬢さんを僕にください」って言われるしSEIKOの店でひとり盃を傾けることもできるのだ。
お父さんが犬であることを、家族しか知らない。白戸家の家族になったら、おそらくその瞬間からお父さんが犬に見えるはずだ。もしくはあぶり出しのようにじわじわと正体が見えてくるのかもしれない。
いったいこれはなんのメタファーであろうか。
もしくは、ソフトバンクユーザーには犬であることが見えているのだろうか。白戸家を取り巻く人々はことごとく別キャリアユーザーなのだろうか。
みんなソフトバンクに加入してお父さんを犬だって見抜いてくれ!というメッセージなのだろうか。しかしお母さんはお父さんが犬であることを見破られるのをおそれているようにも見える。
わからない。
わからないけど、犬を包帯でぐるぐる巻きにするのはさすがにどうかと思う。
そもそも、なぜお父さんは事故に遭う必要があったのだろうか。
わからない。
わからないけど、とりあえずわたしはソフトバンクに乗り換える気持ちは今のところまったくない。
そういえば以前しゃべるお父さんが我が家にやってくるかもしれないというエントリを上げたのだけど、あれはまたもや母の早合点だった。父もソフトバンクユーザーになっていたわけではなかった。うちの家族も、まったくわけがわからない。