厄満

やくみつるってすごい名前だ。だって厄が満ちてんだもん。
泥のようなカラダをひきずりながら会社にやってきた。低気圧のせいか心の病のせいかわかんないけど、最近とにかく起きられない。びっくりするくらいアラームの音に気づかない。二度寝して二度目の起床が出勤ギリギリになって、それでも頭がひたすらぼーっとして何もアクションを起こす気にならない。這うようにして会社にやってきても、すぐ眠くなって船を漕いでしまう。今もなんだかそのまま地面に崩れ落ちて床と同化してしまいそうなくらい、ギリギリの状態で座っている。ああ溶けてしまいそう……。
厄らしい厄がこないまま半年過ぎてしまった。しかしこれから半年先のことを考えると世間は厄で満ちているような気持ちになる。もしかしてわたしにとっての厄は、厄の姿をしていないのではないかとこないだふと思った。次々と発表されるわたしの好きなものたちのもろもろの予定。ひとりっこでわがまま放題に育ってきたわたしにどれかをあきらめるという選択肢なんてなくて、全部逃さずにキャッチしようと今から10月11月のスケジュール帳とにらめっこしていたら、自分の足元がぐらぐらいってることにこないだ気がついた。友達と「わたし会社行ってるヒマあんのかな」って冗談めかしてしゃべっても、暗い部屋に帰ってじっとしていると途端に心許ない気持ちになる。こんなにたくさん世界は好きなものであふれていて、そのどれからも笑いかけられているような気がするのに、どうしてこんなに心がぐらぐらするのだろう。この年にして人生の設計図も描けないのに、場当たり的にへらへら笑いながら生きている自分がどうしようもなく情けなくなる。昔話に出てくる欲張りばあさんみたいに、好きなものも近しい人の信用も、ひとつ残らずすべて手放せない自分が。隣の席の後輩は睡眠1時間でばりばり仕事がんばってるっていうのに!
梅雨はいやだね。どんどん負のスパイラルに巻き込まれてしまう。巻き込まれるもなにも自分が起こした渦のくせに、季節のせいにするところがほんとうにきらいだよ。ちょっとぐらいカラダがだるいだけですぐ調子悪いって言っちゃう弱いところもさ。
頭がぐわんぐわんしてきたからとりあえず仕事しようかな。ちょっとでも自分に言い訳しないとな。