マグダラのマリア

金スマの愛ちゃん追悼SPで、愛ちゃん最後の収録時に中居さんが彼女に贈ったメッセージが流れた。

「洋服や靴にサイズがあるように、人間にもサイズがあると思うんです。でも芸能界という場所は、自分より遙かにサイズの大きいものを要求されるときがある。こんなぶかぶかのもの着れないよって思っても、求められる場所なんです。愛ちゃんはそれに追いついていけなくて、限界が来ちゃったんだと思う。僕はそれを察してあげられなかったことがとても悔しい」

いつもあまり本音を語らない中居さんの口からこの言葉が出たことに、説得力という言葉では追いつかない凄みのようなものを感じて、わたしは泣きやむことができなかった。
別に死ぬわけじゃない、引退するってだけなのに、2年前のスタジオは涙の海に沈んでいて、彼女の存在の大きさを実感するとともに、まるで彼女が逝ってしまうことを予感していたような気にさえなってくる。さよなら愛ちゃんのVTRを2年前のスタジオで見ている愛ちゃんがワイプで抜かれるんだけれど、なんだか本当に今、この時間TBSのスタジオでまるで愛ちゃんが見ているような錯覚に陥ってしまう。
わたしはこの人になんの思い入れもなかったし、訃報を聞いたときも不幸な人はとことん不幸だなあと天を仰いだだけだった。でもこの短い放送時間でじゅうぶんに彼女の人となりが伝わってきて、いつの間にかテーブルの上にはティッシュの山が……。
金スマの収録中に地震が起こったときのこと。怖い!と怯えるベッキーに、愛ちゃんが言うのだ。「ベッキー、こっちおいで」と。
優しくて他人の痛みがわかる人という表現は、彼女には生ぬるすぎるような気もする。でもそんな言葉しか思いつかない。自分より他人の気持ちを優先しすぎて、今自分がどんなに無理を利かせているかわからなくなる。がんばりすぎてしまう。自身の強さと弱さが拮抗して、バランスを崩してしまうのだ。
「今まで本当にありがとうございました。みなさんも人との出会いを大切にして、がんばってください。私もがんばります」
最後に涙まみれの顔でふんわりと笑った愛ちゃんは、ほんとうにほんとうにきれいでした。