グッドナイト スリイプタイト

グッドナイト スリイプタイト@PARCO劇場
作・演出:三谷幸喜
出演:中井貴一 戸田恵子

11/21(金)ソワレ。前から2列目右端。まったくプレビュー感を感じさせないプレビュー公演でした。
あまりにも長い、長すぎるぐらいの三谷さんの開演前アナウンス。出たがりなんだからもう。
はじっこだったので若干死角はあったものの、役者の表情がつぶさに見えてとてもよかった。とてもよかったけれど、つぶさに見えるぶん、ものすごく胸に響いた。
中井貴一老けたな……。
というのが幕が開いてすぐの印象。わたしの抱いていた彼のイメージより、10くらいいっていたような気がした。どんだけ時が止まっていたんだか。戸田さんはほんとうにキュートで、深みもあって、スレンダーな体にはどんな衣装でも似合って、歌もとても素敵で、みとれてしまった。
ひと組のカップルの、30年の物語。結婚から離婚までの軌跡をユーモアとペーソスを織り交ぜながら、時間を行ったり来たりして描いてみせる。三谷さんは優しいけれど、残酷なひとだと思った。
他人どうしがひとつ屋根の下に暮らす意味。取るに足らない、些細なすれ違いの積み重ねが永遠と思われた絆を揺るがしていく。最後にハッピーエンドのどんでん返しなんて起こらない。妻は極めて現実的に、夫は夢の名残に縋ろうとし、それでも静かにふたりの時間は終わっていく。ひっそりと息絶えるように。なんという残酷な、そしてあまりにもリアルな物語。
「永遠なんてないの」
30年を経て変わり果てた妻のひとことが、胸に重くのしかかった。
未婚のわたしはこわくてずっと震えていた。離婚経験のある人は、きっと胸が痛くて死んでしまいそうになるだろう。この芝居を見て平静でいられる人なんているんだろうか。ひとりで生きていくって決意している人以外は、みんなどこかしら心に風穴を空けるだろう。暮れにこんな芝居を平気で観せる三谷さんって、ほんとうに鬼のような人だ。*1

*1:最上級の賛辞