かぎりなくいとしい

よつばと! 8 (電撃コミックス)

よつばと! 8 (電撃コミックス)

最新刊がでたよ!!わーい!!
こんなに続きが出るのが楽しみな漫画ってない。本屋で見つけて「よつばだ!!あたらしいのがでた!!」と、まるで主人公みたいなテンションでよろこんでしまったよ。
なんてことないエピソードの連続なのに、なんでこんなに何度も何度も大切に読み返したくなるんだろう。
たとえば、とーちゃんとよつばがレストランに行くシーン。手をつないで歩くよつばは、フォークダンスみたいに1回くるりと回る。それをとーちゃんはちゃんと歩きなさい、と諭す。大人の話に入れないよつばは、スティックシュガーの袋を破って、テーブルの上に中身をざーっと出して「これ何?」ととーちゃんに聞く。「あーあーあー」ってなるとーちゃん。わたしなんて子供にろくに接したことすらないってのに、なんてことないよつばの仕草に子供ってこうだよなあと心のどこかがつんとするのだ。
いちばんぐっときたのは、やっぱりお祭りの話。そう、山車を引いたらお菓子がもらえるんだよ。すっかり忘れていた、幼稚園のころの記憶がよみがえった。わたしもよつばみたいにはっぴを着て、綱を引いて歩いたんだった。でもよつばと違うのは、極度の引っ込み思案だったために知らないおともだちと綱を引くのがいやで、ずっと両親を振り返り振り返りしながら歩いてたこと。ふんどし姿の大人のおしりをべちんって叩いちゃうような、そんなよつばのバイタリティが4分の1でもいいからわたしにあったらなあ。知らない子に太鼓叩かせて!って言える社交性が3分の1でもわたしにあったらなあ。もっと世界は輝いていたに違いないのになあ。そう思った。でも、思い出の景色は一緒だ。小さい町内会だったから、あんなにいろんな御神輿が集まってきたりはなかったけど、途中でジュースを飲んだよ。そしてゴール地点にたどり着いたよつばは、お菓子の詰め合わせを手にして驚喜の表情を浮かべるのだ。
「どれかひとつでなく!」って目を丸くして驚くよつばに笑いながら、そうだ、そうだった、わたしも思いがけないお菓子の集合体に信じられない気持ちでよろこんだことを思い出して、涙が出るほど胸が熱くなった。ずっと忘れてた。でも確かに思い出の地層深くにしまってあった記憶だ。思い出せてよかった。この人はすごい。なんでこんなに子供の目線を忠実に表現できるのだろう。あまりに好きすぎるので、母親にも読ませる。母親も「なんてことないのにじーんとするね」と言った。マンガの読み方もろくにわからない母親がこんなこと言うくらいだから、このマンガは相当だ。よつばの出自があまり語られないところもいい。とーちゃんがいて、よつばがいて、風香の家族がいて、ジャンボややんだがいる、あの世界がたまらなくいとおしい。面白いマンガってたくさんあるけど、いとおしいマンガってそんなにない。大げさじゃなく、よつばとを読める時代に生まれてよかったと思う。