五右衛門ロック1回目

新感線☆RX『五右衛門ロック』@新宿コマ劇場
作:中島かずき  演出:いのうえひでのり 作詞:森雪之丞
出演:古田新太 松雪泰子 森山未來江口洋介川平慈英 濱田マリ橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと北大路欣也

「MI・RA・I!MI・RA・I!」
うだるような暑さの歌舞伎町を、シュプレヒコールをあげながら行進するぴよまるこ。目はすっかりハート型に変形し、脳内はピンクの霞がかかって正常な働きを停止しています。身のこなしの軽いデブを観に行ったはずなのに、おかしい。なぜこんなことに。大誤算にも程がある。
森山未來がかっこよすぎて失神するかと思った。
持ってかれた。完全に持ってかれた。キミ犯を観ていた方ならこの感覚、きっとわかるはず。持ってかれたとしか、言いようがないのだ。
コキたんと話をしていて、松尾ちゃん演出のキャバレーでのミライ、あれはなんだと。「踊らぬミライはただのミライだ」と森山周一郎の声でつぶやき合いながら、待ちに待ったこの日。先に観劇していたコキたんから「ミライがヤバい!」という報告を受けていたので多少ワクテカはしていたけれど、こんなに矢が刺さるとは思わなかった。踊るなんてもんじゃない、踊りまくりの殺陣しまくりだよ!!もちろんタップもあるでよ!!しかも衣装がツボ以外の何物でもない。だってマント!!マント反則!!マントをはためかせながら踊るように立ち回るミライに、「どうしよう古田も殺陣やってんのにミライを、ミライを観てしまう…!!」とひとりで大葛藤。ひどい。なんたる仕打ち。
いのうえさんは、メタルマクベスでミライにハゲヅラかぶらせた罪滅ぼしをしているのだと本気で思った。そしてメタマクとまったく同じような、親に反感を抱く王子という役柄……。ミライはすっかり新感線では王子キャラだね。
他にも、いろいろあった。
えぐっさんが、大河での坂本さんみたいでハゲしくモヘました。しかも、原住民からギターを渡されて「こんなものは見たことがない」「弾けるわけがない」と言いながらつま弾き始め、最終的にはコンサートみたいにギター弾き語りしながら客をあおったりするシーンが!なんというか、歴史的瞬間に立ち会ったような気分になった。
いのうえさんは、すごい。客の需要を完璧に把握し、それを直球で実現してくれる。わたしがいのうえさんの演出に絶対的な信頼を置いているのは、そこなのだ。言葉は悪いけど、出し惜しみせずに使えるもんは使えみたいなサービス精神が大好きだ。アオドクロでローラースケート履いたあっくんを見たとき、わたしは感動に打ち震えながらそう強く思ったのだ。ああ、でもこれ、サービス精神じゃないのかもな。いのうえさん、ミーハーなんだと思う。わたしたちが見たいものは、きっといのうえさんの見たいものでもあるのだ。だからこその、今回のミライとえぐっさん。誰だってミライのタップが見たいし、えぐっさんの弾き語りを聴きたいと思うだろう。だからいつも間違いがない。いのうえさんを劇場で見かけるたびに駆け寄ってぶんぶん握手しながら「ありがとう!」って伝えたいと思うんだけど、できないからいつもテレパシーで念じているよ。
初コマ。あんなに広いとは思わなかった。そしてもちろん初欣也なわけだけど、とにかく御大の存在感がハンパない。ハンパないという言葉を使うのでさえためらってしまうほど。重厚な演技、凄みのある立ち回りを見ていたら、「ありがたや…!」と手を合わせて拝みたい気分になった。
後半の畳みかけと殺陣の多さにくらくらする。頭がしびれる。松雪さんはたぶんクレオパトラより美人で、聖子さんは二幕からしか出てこないのに、とにかくものすごい。さすが新感線の看板女優。右近さんのフレディマーキュリーのコスプレで「あんたも好きねえ」とエア茶を噴いたし、慈英のウザいほどの芸の細かさに爆笑しながら舌を巻く。じゅんさんは出てくるだけで面白すぎてずるいし、マリちゃんはとことんマリちゃんでうれしくなる。マリちゃん歌っとる!と元モダチョキファンのわたしは感涙にむせぶ。さとみちゃんは、もはや様式美だ。 前田さんと川原さんの斬り合いに血湧き肉躍る。前田さんの二の腕が好きだ。粟根さんとじゅんさんの一騎打ちに大興奮。古田は主役のわりには案外出番が少なくて、殺陣もマチネだったせいかなんとなく速度がゆるくて、でもキメるとこはキメまくってこの人もやっぱずるかった。見得を切らせたらこの人の右に出る人はいない。そして白波五人男風にミライ松雪江口古田が順番に大見得切るシーンがあるんだけど、興奮しすぎて脳溢血になるかと思った。かっこいいとかいうレベルじゃない。これでもかって襲い来るケレンに理性があっけなく吹っ飛んでしまう。キャー!って叫びたくなる。うちわ振りたくなる。感情表現すら、もうどうしていいかわからなくなる。
ミライミライと熱に浮かされていたけど、カーテンコールで御大差し置いて最後に出てきた座長は、フライヤーの五右衛門そのままに中指おったてて登場し、仁王立ちで上を向いて白い粉を盛大に噴き出した。ああ、やっぱりわたしの愛する人だと思った。10年追っかけ続けて、これからも追っかけ続ける人だと確信した。
感想なんてまとまんないや。だっておもしろかったとしか言えないんだもん。さっきこれは親にも見せないと!って衝動的にあさってのチケットも取っちゃったので、あと残り2回。骨の髄まで吸い尽くしてやるぜ!