両極端

中学2年のとき、好きな人ができた。
手の届かない世界にいる彼は、酸いも甘いもわからないわたしにオトナのあれやこれやを華麗に、そして時に下世話に教えてくれた。のめりこむのに時間はかからなかった。もっと知りたい、そうして知った彼の年齢は、わたしの18才上だった。
「親子って言ってもおかしくないのか……」
指折り数えて年齢差を知ったときあまりに愕然として思わず肩を落としたけれど、同世代の女の子たちと違って大人の魅力にあふれた彼に恋焦がれているという事実に、わたしは勝手に酔いしれた。早くオトナになって彼の世界に近づきたい、できればもっと早く生まれてきたかった、本気でそう思った夜もあった。

30になって半年で、好きな人ができた。
手の届かない世界にいる彼は、酸いも甘いもある程度噛み締めて灰色になってしまったわたしに、新しい扉を開いて輝きに目も眩まんばかりの世界を教えてくれた。のめりこむのに時間はかからなかった。もっと知りたい、そうして知った彼の年齢は、わたしの10才下だった。
「きょうだいって言ってもちょっと厳しいか……」
指折り数えるまでもなく年齢差を瞬時に理解したときあまりに愕然として思わず自分に肩を落としたけれど、もう、こわいものなんて何もなかった。案外そういう人がまわりにもいたからだ。もっと早く生まれてきても、もっと遅く生まれてきても、きっとこの世界に出会うことなんかなかっただろう。すべてをポジティブに考え、無心でキラキラの世界に身を投げた。マジックなんとかルームとか食べたら、きっとこんな気持ちになるんだろう。これがコウイチ・サトウがマークXのCMで言うところの、「私の中に、俺が帰ってくる」っていうことなんだろうとも思ったりした。

いちいちわたしは極端なんだと思います。最近ほんとうに自分の脳の煮え具合がヤバいので、花が咲くたびにベホイミと同じ効果を期待しつつ「アイテハ ハタチ」という呪文を唱えます。効いたことは一度たりともありません。*1

*1:こんなことに注釈つけるのはどうかと思いますが、中2のときの紫の君は某米バンドのヴォーカル、ジャストナウの白薔薇の君は蛇(しかもJr.)の人です。イエーイ!