人がゴミのようだ

夢の話をする。
わたしは海の上に吊られている、なんだか広いデッキみたいなところにいる。誰だか忘れたが、知ってる人と数人で腹這いになって太陽さんさん浴びながら話をしている。そこはとても広いので、知らない人もたくさんいる。海の上なのに、上から吊られている変な場所だ。空の上の何かとつながっているのだろうか。どこかとつながっている、そのケーブルの下あたりに、わたしはいる。
突然、きしむような音がしてそのデッキが外側に折れていく。とっさにそばにあったケーブルをつかむ。知っている人も、知らない人も、みんな海に落ちていく。ものや人が滑り落ちる音がする。わたしは必死でケーブルにつかまっていたので、下は見ることができなかった。するとそのケーブルを支点にして、デッキはすっかり半分に折れてしまった。わたしは、折れた部分、つまりデッキの厚さ×2の幅に運良く腰かけていた。
ぶらんぶらんと、風を切って何度か揺れた。不思議と怖くなかった。体全体に受ける潮風の感触を今でもはっきりと憶えている。何の音ももう聞こえない。わたし以外、そこには誰もいなかった。
場面はそこで途切れる。
ふと気付くと、波打ち際にいた。「ああ、よかった」と、篠井英介氏(俳優)がわたしを見つけて駆け寄ってくる。助かったのか、しかしどうやって、と、わたしはかなり冷静な気分で駆け寄る篠井氏の白いジャケットを見つめていた。
そして誰かが迎えに来てくれたのか、わたしは車に乗る。同乗者はすべて知り合いのようだった。そのまま海岸線を走っていると、浜辺に見覚えのある扇風機を見つけた。それはさっきデッキの上でわたしたちが使っていた扇風機だった。オレンジ色のアクリルの羽は、確かにそれだった。「あの扇風機!戻ってきたんだ!」嬉々とした声を上げるわたしに、同乗者はおしなべて薄い反応をする。そうか、誰もあの光景を見ていないから。浮いている自分を自覚しながら、ぽつんと取り残されたような気分になった。
置かれた状況にしてはずいぶんと静かで、淡々とした夢だった。どんな心境の現れだろう。秋は物思う季節、知らず知らずのうちにいろんな不安を覚えていたのかな。
今日は楽しい夢がいいな。