何もない1日

夕方、父親と新装開店したローソンへ。日中の目の眩むような暑さはとうに退き、最高に心地よい風が吹き抜けてゆく。風の中に淡く潮の香りが混ざっていて、わたしは大きく息を吸い込む。温度が上がると漂ってくる潮の香りが、わたしは本当に大好きなのだ。もっと湿度が高く、蒸し暑い夜の潮の香りはむっとしてえづいてしまいそうになるときもあるけれど、思い切り吸い込むと海がまぶたの裏に見えるような、この淡さはとてもいい。小学生の頃は汽笛すら聴こえたというのに、海がだんだん埋め立てられて遠くへ行ってしまったせいで、もう今では聴くこともない。
わたしの育ったこの家は9月になくなってしまう。見慣れた空、見慣れた景色、全部思い出に変わってしまう。新しく居を構えたのに週の半分以上ここで過ごしてしまうのは、甘えのせいだけではないのだ。