白夜の女騎士

コクーンにて。野田原作、蜷川演出、潤さん主演のアレです。早起きして並んで取った大人計画と敢えなくダブルブッキング、涙を呑んでこちらを選んでしまいました。良かったのか悪かったのか…でもどうしても野田には勝てなかった。パンドラの鐘のことをすっかり忘れていた。あと客席が甘い匂いにむせかえることも忘れていた。でも、土曜日に観てきました。

会場に入ったら役者が普通にうろうろしてた。中2階に上がる階段のところで、黒ヘル+バンダナを巻いて顔を隠した青年とすれ違う。あらら、今回はこんな演出なのね。席について見下ろすと普通に杏ちゃんがいる。きゃわいい。最初から開いてる搬入口。そうだった!今回は最初から開いてるってどっかで読んだんだった。ちょっと早めに来て覗いてみればよかったなあ。そしたら階下をうろうろしてるさっきの青年が…友人に「客の目線から言ってアレが主役の人だね」と言われてびっくり!さっきすれ違ったやんけ!なぬぅ、蛇の人を野放しにしていたのか。へえ〜。
そして開演。遊眠社時代のも観たことなくて、ニーベルングの指環を読んでおくといいらしい、そして三部作らしいという断片的な基礎知識しかなく。でも読めてるはずもなくまっさらなままで体験。うーむ、「パンドラの鐘」で野田はやっぱり野田で観たいという結論に着地したわたしの気持ちは変わりませんでした。好みの問題だと思うけど、野田の「余白の美」が好きなんですよ。あとあの字幕。あれは親切…なのかな?意図が不明なのですが*1わたしは「いらないよあれは…」と思ってしまった。言葉遊びの解説とか、なんだかギャグの笑いどころを説明してるみたいでわたしはお尻のあたりが非常にむずむずしてしまった。でも実はザ・蜷川演出というのは全然キライではなくて、その派手な仕掛けと緻密なタイミングの良さにはちょっと鳥肌が立ったよ。
役者は、とにかく勝村(敬称略)に尽きる。ホントにわたしはあの人が好きすぎる。そしてひいき目抜きにしてもやはり群を抜いて際立っていると思う。潤さんはやはり体当たりという感じで一生懸命こなしているという印象で、それはサスケの姿に重なるところがあるからもちろん好感は持てるんだけれど、やはり勝村の確かさにはひたすらため息をついてしまう。なんて素晴らしい役者さんなんだろうと改めて実感。杏ちゃんに突き飛ばされて場外まで飛んでってたけど大丈夫だったんだろうか…。あと最前列の女の人がやたら勝村に抱きつかれていて(語弊がありますか)非常にうらやましかった。トロンとした目で見ちゃった。
余談ですが、やはり蛇のお客様が多いので野田の脚本に耐性がないせいか、ちっちゃなことでもドカンドカン湧きまくり。反応がいいのはいいんだけど、うーん集中出来ない…と眉間にしわを寄せること数十回。山に呼びかけるシーンでちゃんと客がこだまの役やってたのに度肝抜かれた。なんなんだあれ…。あとやっぱり当たり前なんだけど潤さんに甘いので、潤さんが殴られたりおどけたことをやると本当にみなさんお喜びになる。その辺もやっぱり野田で観たかった、野田だったらもっと舞台に集中出来るキャスティングにしてくれるだろうなあという思いもあったわけです。
話がそれました。杏ちゃんはここ最近の中ではピカイチのできばえではなかろうか。ロミジュリとかより全然よかった!最前列のお客さんの上に被さるところがあったんだけど、舞台からぴょこんと飛び降りてそのお客さんに小さく「すみません」とお辞儀してから芝居に入った杏ちゃんがちょうかわゆかった!なんていい子!六平さんは富士山にロープ投げるのを再三失敗してかわいそうだったなあ…客には爆笑されるし…そんなシーンじゃないのに…そう、笑いどころじゃないのに笑う客が多くていたたまれない気分になること数回。芝居自体は割とよかったと思うけど、ホント集中出来なくて困りました。ぬーん。スタオベはちょっとやりすぎかなーて思った。あ、でも勝村にはわたしもスタオベ。刀を振り回す彼を観て「お願いだから新感線に出てください」って何遍も心の中で唱えたよ。お願いいのうえさん…!

*1:パンフ買ってないのでパンフに書いてあったら失礼