五月大歌舞伎

あいかわらずタイムラグ更新も甚だしいですが。火曜日に五月大歌舞伎・夜の部を見てきた。これがもう。奥さん。

心優しいお方がチケットを譲ってくださったおかげで、1階13列というすばらしい席で観劇そして感激。こんな近いのはじめてだよ!(涙)双眼鏡使わなくても顔が見えるもん!ふるえる!五月はとにかくノドから手が出るほどチケットがほしくて、びえんびえん泣いてたら優しい方が手を差しのべてくださった。この世はまだまだ捨てたもんじゃない。チケット代で新幹線乗れるけど、そういうことは考えない。考えない。

義経千本桜
あの有名な狐のお話。義経がエビぞうだったんだけど、やっぱり今日もとってもおネムなエビちゃまだったのでした。セリフのないときとかすっごい勢いでまばたきしてんの!それがおもしろくてエビちゃまの顔ばっかり見てしまった。先月も勘太郎と一緒に娘道成寺に出てたけど、一生懸命お父ちゃんの舞を見つめてた勘ちゃんとその隣で目を閉じてらっしゃるエビちゃまとの対比がとてもステキだったのでした。こんな観劇態度でたいへん申し訳ない。しかしなあ、エビちゃまはほんとうに男前だこと。立っても座ってもサマになる。眠そうだったけど。最後、菊之助とポーズを決めるところは絵を見てるみたいだった。

・鷺娘
とにかく評判がいい多摩三郎(なんだこの変換!)玉三郎の鷺娘。えんぺとかであまりにも絶賛されてるからどれほどのもんだろうかと思っておりましたら。
幕開きからとにかくひきこまれる。静謐とした空気の中で、淡々と舞うくせに情感が溢れている。引き抜きで次々と変わる衣裳も艶やかに、とにかくぽかんと口を開けて見惚れるばかり。美しいものを美しいとしか、素晴らしいとしか感じられない、単純な感情だけに支配されて。ああ、言葉に出した途端に色褪せるから書いてしまいたくない。
クライマックス、吹雪の中狂い舞う鷺娘を見ていたら、涙が。 
「感動」なんてチープな言葉で片付けたくない。間欠泉が吹き出すように、突然それはやってきた。抑えきれない、言葉にならない感情が吹き出して、涙になった。びっくりした。歌舞伎を見て泣くなんて。
前に勤めていた会社で、舞踏家としての玉三郎の本を出していた。まったく無知だったわたしは、「歌舞伎の人でしょ?なんでダンスの本扱いなのかなあ?」なんてことをバカみたいにずっと思っていた。やっとわかった。この人は、本物の舞踏家だ。台詞のいっさいない踊りだけで、こんなにも心をふるわせる。

幕引きのあと、すぐについた客電がうらめしかった。

・研辰の討たれ
これが見たくて見たくて。見たくて見たくて。初演見てないんだもん。噂には聞いてたけど、こんなにも現代調だったなんて!しかもドリフかっちゅうくらいどっかんどっかん湧く客席。早口でまくし立てる勘三郎を見てたら、ニンゲン御破産見てるみたいな錯覚に陥った。わっ!あれ獅童だ!時の人がいる!などと思いつつ。序盤、家老が息子を呼ぶシーン。出てきたのは染五郎勘太郎!うひょ!ちょうかっこいい!ひびのさんの衣裳もちょうすてきで、危うく黄色い歓声を上げるところでした。
ああ、もえもえしてしまう。染ちゃんと勘ちゃんが兄弟の設定だなんて。染ちゃんが歌舞伎やってんの、初めて見たよ。やっぱり歌舞伎の人だね。しかもこのふたり、辰次に「ぼっちゃん1号2号」とか呼ばれてんの。ぷぷー。ふたりで打ち合いするところもめちゃめちゃ運動神経の良さを発揮しててちょうかっこいい!(バカのひとつ覚え)あと、勘ちゃんが刀を構える姿にはもう本気で溶けそうでした。役柄ともあいまって平ちゃん風味だったし。このふたり、まじめな顔でじゃんがじゃんがやったりあるある探検隊やったりあまりのはじけっぷりにちょっと唖然としてしまった。なに?祭り?
あとはまとまんないから箇条書きで!
・辰次が1号2号に言う台詞
 1号−なんだい阿修羅みたいな顔して…
 2号−なぜか小さいころをよく知ってるんだよ。震度3くらいの地震なのに彼女に電話かけたりしてて…
 2号、あわてる。
・辰次「夜でもアーサー!」
・演出、空間の使い方が野田節炸裂でちょう興奮
・中盤、通行人的な出方だったけど七之助が喜多さんのカッコで登場!
 思わず「きゃ」と言ってしまって慌てて口をふさぐわたし。若い人を中心に拍手の嵐。
福助扇雀女形コンビ、ギャグも完璧、間も完璧。
 現代劇いけんじゃん!全然いけんじゃん!と大興奮。何様。
・出た!スローモーション!
・出た!モノローグ!
・でも終盤ちょっと冗長だったぞ!
・ラスト、いつも野田地図でかかるあの音楽(無知なため曲名がわからん!)がおそらくバイオリンソロで。コクーンにいるような錯覚に。
・鳴りやまない拍手。まさかまさかのカーテンコール。所在なげな感じで突っ立ってる役者さんたちがかわいかった。勘ちゃーん!(息子の方)あいしてるー!勘三郎が気を利かせて獅童を前に押し出す。拍手の嵐。染五郎も押し出す。赤ちゃんが生まれる?生まれたらしく。拍手の嵐。
・若い人中心にスタオベ。わたしも負けじとスタオベ。

おそらく頬が上気してたに違いありません。大満足!鷺娘も含め、叶うことならもう1回見たい…!歌舞伎座を出たら黒塗りのハイヤーが。ちろりと覗いたら海部さんの姿が!うおお!久しぶりに見た!水玉ネクタイかどうかは見えなかった!

帰ったら福助主演の2時間ドラマやってて変な感覚に陥る。こんなにも感情があふれすぎて、感想を文字にしづらいのなんてひさしぶりだ。ちゃんと書けた気は全然しないけど、自分のための覚え書きとして。