後追いのジレンマ

今からお話しするつれづれは、わかる人は首をぶんぶんしながらうなずいてもらえると思うけれど、わからない人にはまっっったく、1ミリもピンと来ないお話です。
ミュージシャンでもアイドルでも俳優でも、たとえば何かを新しく好きになる。すると自分が好きになる前の「それ」にも俄然興味が湧き、歴史をさかのぼろうとする。今は文明が進んでいるので、魔法のハコである程度その願望は叶えられる。しかし、「それ」を自分より前から好きで追いかけている人たちの記憶まで共有することはできない。先輩が語るかつての「それ」の姿はどうにも魅力的だが手の届くものではなく、ブログやツイッターで自分の後追いの情熱について語るのがなんとなく気恥ずかしくなる。「それ」のキャリアが長く、何かのきっかけでブレイクし有名になったあとに好きになり始めると、その葛藤はかなり顕著に表れる。
これを「後追いのジレンマ」という。
青田刈りなんてとてもできっこないミーハーなわたしは、後追いのジレンマのエキスパートだ。
最初は米米だった。中学のときにJAL沖縄のCMで浪漫飛行落ちしたわたしは、それが米マニアの間から疎まれる存在だということをあとから知った。わたしも君がいるだけで落ちのファンを同じように疎んだ。そういうことなのだ。でもわたしはなんとしても同好の士を募ろうと年上ばかりの輪に飛び込み、昔の録画や音源を必死になって集めた。でも「いちばんいい時期の米米」を知る人たちの記憶をなぞることはできず、どうしてわたしは5年早く生まれてこなかったんだと嘆いた。
そして愛$の世界に身を投じるようになってそれはもっと顕著になる。「新参/古参」という言葉をわたしはこの世界で初めて耳にした。別に悪いことしてるわけじゃないのに、新参はなぜだか肩身が狭いのだ。この世界特有のちょっと強めなファンが多いので、とんちんかんなことを口にして「それ常識だから」「そんなことも知らないの」と思われるのがなんだか怖くなる。新参なんで許してくださいサーセン、が心の枕詞になる。そんな世界ともなんとなく折り合いをつけて、残念なことにわたしもキャリアを積んでしまった。いつの間にか最近ジュニアっこにハマった人たちの右往左往っぷりを見ては「戸惑うことも多かろうよ^^」と年寄りのような気分になる。そこに突然現れたのがオードリーさんで、例の2008年M-1ですぐさま好きになっていればそれまでの歴史がそんなにないコンビだったから追うのも簡単だったけれど、わたしなんか本腰入れ始めたのが去年の夏頃だ。相手は年間テレビ最多出演芸能人であるからして、マジメに追っかけてた人と彼らに関する知識の差が歴然である。そもそもM-1も見てたはずだけどよくおぼえていない。「またこの話してる」がわたしには初耳だ。ファンの間では常識とされていることがわたしにはわからない。かといってなんだか質問するのも気が引ける。教えてちゃんにはなりたくない。わかりますかこの気持ち!
好きなものが増えるたびにこの繰り返しだ。無名の頃から追っかけてるものなんてわたしにはないんだよ。唯一自慢(?)できるのはキングオブコメディの第1回単独を観てることで、でも数年追っかけたのちブランクができてしまったから、KOCでチャンピオンになって心底うれしかったけれど少し負い目があった。また追いかけ始める自分の現金さにもちょっとへこんだりして……。しかも最近わたしはあんなに恐れていた吉本の世界に足を踏み込んでしまった。こここそ恐るべき魔境じゃないか!ついったーで吉村だの綾部だのギャアギャア言ってるけどあまり深く言及しないようにしてるのは、ピカルの定理*1の自分が恥ずかしいからだよ!ほんとミーハーでごめんなさい!
というふうになぜか謝ってしまうのです。こわい。それでもわたしは吉本ギャルに怯えながらもおそるおそる劇場に通い、変なとこだけわたしは順応性が高いので、交じりはしないもののわりとすぐ慣れてしまう。心の堤防低すぎだろ!!だけど気持ち的には隠れキリシタンみたいな心境なんだ。
どうすればいいんですか。ねえ。教えてください。何かを好きになるたびにこの葛藤と闘わなければいけない、めんどくさい自分をノックアウトしたい。誰か優しい先輩がいればいいけれど、気が多いわたしにはひとりで闘わなきゃいけない局面ばっかり訪れる。ここだけ読むとなんかかっこいい!孤独のファイター!立て、立つんだピヨ丸ー!!!
同じ悩みを持つみなさん、がんばって生きていきましょうねえ。何かを好きになること、死んでもやめんじゃねえぞー!

*1:ファンになり始めたきっかけを「○○出」という風潮があるのだよ