誰がうまいこと言えと

金曜日の16時、表参道ヒルズ内トラヤカフェにて。母親とだらだらお茶を飲んでいたら、ほどなくして30代くらいの綺麗な女性が隣の席に座った。すらりと細い足を組んでメニューを開き、店員にオーダーを伝えている。

「シャンパンと、あんパンを」

えっ
メニューにシャンパンがあることにも驚いたが、その押韻具合はいったいなんなんだ。
ネタなのか。
そういう罰ゲームなのか。
しかし彼女は恥じらう様子もなく、店員も動揺を見せずに注文を復唱している。
ふきだしそうになったわたしのほうがもしかしておかしいのか。そしてその食べ合わせはどうなんだ。セレブの間ではそういうのが流行っているのか。高級感と庶民感の融合が今、新しいのか。
美しい女性は細い指でシャンパングラスを傾け、優雅な仕草であんパンを咀嚼していた。
おしゃれプレイスには魔物が棲んでいる。