さだショック

今すぐ義務教育のカリキュラムに「さだ」を導入すべきだと思う。
昨日、さだまさし35周年記念コンサート@NHKホールに行ってきましたよ。
親孝行でチケットを取ったつもりが、すっかりミイラ取りがミイラになってしもうた。ここでも再三書いてるようにNHKの生放送シリーズ大好きでいつも観てるし、トークのポテンシャルも楽曲の素晴らしさもわかっていたつもりなんだけど、これほどまでに完成度が高いものとは。これはまるで総合芸術だよ。1部はマニア向けの選曲で15分の休憩を挟み(さだ「お互い年だからいたわり合わないとね」)2部は素人でもわかるさだまさしってなセットリスト。北の国から始まって案山子、関白宣言、秋桜防人の詩(ちょう感動した!)という、なんかこっちが頭下げたくなるような名曲オンパレードでございました。まあわたしら親子は言うてもさだ素人なので、今回は35周年コンサートだしシングルコレクションみたいなことしてくれるだろうなーって下心でチケット取ったんだけど、その仕事きっちりさに脱帽するだけでなく、公演時間の半分(もしかしたらそれ以上)を占めるトークの素晴らしさに舌を巻いた。わたしもっとゆるい感じなのかと思っていて、きみまろばりによどみなく笑いをどっかんどっかん取っていく達者なトークに最初だまされていたんだけど、ちっとも無駄がないんです。もてあます時間というのが一瞬たりともない。すべての話がよどみなく進行し、すべてが披露される曲につながっていく。これはもう、感動だった。もちろん話が脱線することもあるんだけど、そんなこともわからないくらいにきちんと軌道修正されて元の場所に戻っていく。落語を聞いているようでもあり、ラジオを聞いているようでもあり、でもそのどちらもこのよどみなさには敵わない気がした。話の内容も笑えるだけの話から心に染み入る話までとにかく振り幅が大きいし、ただバンドメンバーを紹介するだけだって全部に振りとオチがちゃんとついている。鮮やかすぎて震えが来るほどだった。
以前コンサートにゆずの北川くんが来てくれたことがあって、自分もこないだゆず観に行ったんですよ。すごく新鮮だった。だってトークがないんだもん。トークなんてなくてもいいんだよね、コンサートなんだから。あっちは3時間立ちっぱなしだよ。同じことうちでやったら死人が出るよ。演奏する側にも。つってフォーク界の重要無形文化財と称されたギタリストの人に照明が当たるというコント的な展開も素晴らしかったんですけど、すごく心に残った話を自分のために書き留めておきたいと思います。
ツアーばっかりの生活なので、よくいろんな土地に旅ができていいねと言われます。だったら代わろうか?僕たちは旅をすることが生業なんです。だからホテルの空調に体が慣れちゃって、たまに家帰ると風邪ひくんですよ。*1でも旅をしてて、日本の四季の素晴らしさによく気づきます。桜前線という言葉がとても好きなんですけど、「桜の見頃は来週中頃でしょう」って花の見頃がニュースになるなんて、この国はなんと花に祝福された国なんだろうと思うんです。だからもっと花を見よう、こんなにも祝福にあふれている国なんだからって。人もそれぞれ花なんですよ。もう咲いちゃった人、ずっと咲き続けてる人、いろいろいますけど、まだつぼみの人はこれから咲くんです。きっと花開くときが来ますよ。今、教育でもなんでも、人生は楽しい、人生は素晴らしいってことをみんなアピールしがちですけど、そうやって教えるから絶望する人が増えるんじゃないかな。人生はつらくて苦しいことばっかりなんです。だけど、そう考えれば逆に人生はもっと豊かになると思うんですよね。
……わたしが書くとすごいちゃちい表現になってしまってほんとうに絶望なんですけど、とにかく涙が出るほどありがたい説法だったんだってば。そこから「曲にいきます」ともなんとも言わず、話の切れ目に静かにギターを持ち、そしてすっと歌い始めるさだ。かっこよすぎる。さだの生バイオリンにも鳥肌だ!!
エンターテインメントにかかわるすべての人、エンターテインメントにちょっとでも興味のある人はみんなさだのステージを観るべきだ!ってちょう鼻息が荒くなりました。こんないい話&いい曲、人生も峠を過ぎた(失礼すぎる)人たちばかりに聞かせるのはもったいないよ!WOWOWで1月3日にやるからぜひ観てください。わたしも録画します!!
ちなみに母親は「風に立つライオン」という歌がものすごく好きで、再三やってくれないかしらって言ってたんです。聴かせてあげられたらいいなあって思ってたんですけど、本編最後まで聴けないままで。だけどアンコールで緞帳が上がったら、パーカスの人がアフリカンなリズムを叩き出したんですよ。あ、やるなって思いました。直感は当たり、母は隣ですすり泣き、そのドラマチックな世界にわたしも気づいたらぼろぼろ泣いていました。故郷をあとにし、アフリカでひとり医療に携わる男がかつての恋人に宛てた手紙形式で歌は進んでいくんですけど、後半、アメージンググレースが織り込まれるんです。ここがもう、ヤバい。抑えてた気持ちが決壊します。間違いなく。CDで聴いても危険なのに、生のあの壮大な演奏を聴いてしまったら、なんかもう感情がリミッター超えてしまって、ちょっと頭おかしくなってしまいました。でも母親のいちばん聴きたかった曲を聴かせてあげられてよかった。まっさんありがとう。いい親孝行になりました。おかげさまで「また行く!絶対行く!」って息巻いてるので、これからも通わせていただきます。ああ、ほんとうに滑り込みで2008年ベスト3に確実に入るコンサートになりました。いいもの観た。

*1:この日もちょっと風邪気味でした