懺悔

雨、両手に荷物。9階のわたしの部屋は風が強く、かじかんだ手で鍵を探り、鍵穴に差し込む。差し込めるが、回らない。
右も、左も、回らない。
焦って、何度もガチャガチャやる。同じことだ。今日は祝日だから、管理人がいない。どうすればいい。管理会社に電話か。
そう思ったとき、扉が開いた。え?合鍵持ってる連れが来てんの?
と思ったら、めがねをかけた若い女性だった。
え…?と思って、見上げると、701。
「あっごっごめんなさい階間違えましたすいません!!!!!」
そうだった。エレベーターに乗るとき、わたしは間違って7階のボタンを押してしまったのだ。何度押しても消えなくて、そのことをすっかり忘れて7階で降り、自分の部屋だと思って必死に鍵を開けようとした。
彼女は少し緊張したような表情でうなずきながら、風で髪の毛を逆立てて謝るわたしを見送って、静かに扉を閉めていった。
ああああ!!本当に申し訳ない!もしわたしがそんなことされてたらちょう怖いもの!!ひとり暮らしの部屋で鍵ガチャガチャやられてみ?生きた心地しないよ!!ああ、あらためて菓子折でも持って謝りに行きたいよ。ほんとうに申し訳ない。ごめんなさいごめんなさい!!!