ダージリン急行

恵比寿ガーデンシネマで。ほんとは「ぜんぶ、フィデルのせい」がちょう観たかったんだけど、タッチの差で終わってしまっていた。だけど母親が「これも面白いらしいよ」とやたらと薦めてくるので、ロードムービー好きだし、評判もよさそうだし、なにより母親のおごりだし、と、あまりに受動的な感じで映画館へ。
兄弟っていいなあって、思った。
わたしはひとりっ子で、ひとりが好きで、大勢が苦手だ。母親が、友達が、芸能人が、わたし以外のすべての人が兄弟の話をするとき、わたしはいつも言葉少なになる。わからないからだ。わからなくて、うらやましいからだ。
三人三様の傷を負ったダメな三兄弟が、一緒に列車でインド旅行をする。ケンカをしては仲直りし、すぐまた仲違いをし、笑い、泣き、肩を抱き、そしてまたそれぞれの日常に向かっていく。
わたしはその光景を、ひどくうらやましいと思った。兄弟のいない者には、兄弟がどういう存在なのか、死んでもわからない。わからないものを見せられて、わかるふりをするのはむずかしい。でも、涙がにじんで、笑顔が浮かんだ。だから、なおさらだ。
とてもいい映画でした。インドの風景とそれにとけ込めてない欧米人と、ドタバタ珍道中と、そして祈りと再生の物語。
所見をいくつか。最後まで三男は靴を履かず裸足で旅をしているのが不思議すぎる。宗教上の理由か。協賛がルイヴィトンらしく、父親の形見というボストンバッグが全部ヴィトン!圧巻!しかもサファリ柄のやつ。最初山と積まれたヴィトンのバッグを見たとき噴いた。
それから心に残った英語。三男が相当なプレイボーイで、列車の乗務員の美人ちゃんとやっちゃうんだけど、三兄弟が騒ぎを起こして列車から放り出されたときに美人ちゃんに彼が言ったひとこと。

Thank you for using me.
「お相手ありがとう」

英語なんてからきしのわたしは、普段字幕ばかりに目をこらして耳はスルーなんだけど、これはひどく心に残った。理由はわからないけど、劇場を出て、すぐに携帯にメモったのを覚えている。
いい映画でした。