悲しみの美少女

母は陽気だが、すぐくよくよする。
私は陰気だが、立ち直りが早い。
そんな母娘ですが、言語体系が似ているのです。似ているというより、母親に影響されまくったといったほうが正しい気がしますが。さきほどある人のことを考えていて、憐れに思い、ふと頭に浮かんだ言葉が、
「カワイソウコさんだ」
「カワイ」が名字で、「ソウコ」が名前です。別にモノにさん付けするイタイ家族ではないのですが、生死に関わるほどヘヴィではない、でも相当数の悲しみを背負った人に、母がそう感想をもらすことが昔から何回かありまして。わたくしはすっかり刷り込まれてしまいました。
ソウコさんは薄幸の美少女なのです。たいていサナトリウムにいます。白い日傘をさして、白いワンピースで、少しうつむきがちに歩きます。ひとめ見ただけで、誰もが彼女を守ってあげたくなります。思わず手を差し伸べると、か細く、透明な声で「ありがとう」と静かにほほえみます。でも彼女の瞳から、悲しみの色が消えることは永遠にないのです。
なぜなら、カワイソウな子だからです。名は体をあらわすからです。
……わたしは何が書きたいんでしょうか。ヤマもオチもイミすらもないよ。