永遠に終わらない歌

こっこ@武道館、1月9日。バンドスタイルでのライブ。
感動しすぎて、逆に胸が痛くなった。
もうあの頃のこっこはいない。別人だ。けもの道や羽根を歌っても、それは単にひとつの表現の果てに紡ぎだされる歌に過ぎなくなっている。あの切り立った崖の上で声を絞り出しながら歌うような、あの頃のこっこはどこにもいなくなっていた。
それがうれしかった。復活前のライブは、見ていていつもつらい気持ちになったから。
舞台上のこっこはバレリーナだった。軽やかにステップを踏み、しなやかな身体を大きくたわませながら空を泳ぐように歌う。大きく手を振る。こんなたくさんに人たちに囲まれてうれしいと涙ぐむ。そしてなにより彼女は、包容力というとても大きな宝物を手に入れた。
こっこはMCで、「東京が好きです」と言った。「たまに『東京と沖縄どっちが好きですか』ってバカな質問されるけど、あっちゃんは東京も好きです」と。
「東京には空がないなんて言う人いるけど、上を見上げる気持ちを忘れてるだけだと思う」
「地方出身で東京の悪口言うやつは国へ帰れとあっちゃんは思う」
東京からふいに姿を消し、愛する沖縄に帰ったこっこがそう話す。くすぐったい気持ちになった。
「東京で生まれて、どこにも他に帰る場所のない人たちのことをもっと大事にしたい」
この言葉を聞いたとき、わたしはわっと涙が出た。
ジジババもこっちの人なので、わたしには田舎という場所がひとつもない。夏休みのたびに田舎に帰る同級生や、盆や正月に帰省して故郷の友達と会うなんて話を聞くたびに、わたしはいつも心のどこかが小さくうずいた。でもいつからか旅から帰って来て新幹線の窓からそびえ立つビルの群れや狭い空を見上げるたびに、懐かしい気持ちになる自分がいた。ほっとする、と思うようになった。ここで生まれて、たぶんわたしはここで死ぬだろう。息苦しい都会だなんて言う人もいるけど、これがわたしの生まれ育った土地の空気だ。息苦しいなんて思ったことなんて一度もないよ。でもそれを不幸だと思ったことも一度もない。どんどんビルが建ってなじみの風景が消えていくのは仕方ない、それは東京の運命だから。こっこは言う。沖縄も日々風景が変わる、新しいビーチやホテルが建つけど、でもそのたびに環境がどうのって注目される。だけど東京は違うだろ?いくらビルが建ってもおしゃれモードにしかならんやろ?そうだね、そうだね。ありがとう、そんなこと言ってくれる人は今までひとりもいなかった。どんな本を読んでも、故郷を懐かしく思う記述はあっても、都会に住んでどこにもいけない、帰りたいと思っても帰る場所のないこの寂寞とした気持ちを思いやる記述はなかった。
そして「思いをこめてこの歌を贈ります」と、こっこはジュゴンの見える丘を歌った。
最高のライブだったとしか言えない。流星群とNever ending journeyには鳥肌が立ったまましばらく戻らなかった。あと、照明が神すぎてしびれた。DVD買おうかな。