メタファー

なぜ山に登るのか。そこに山があるから。
そういうことなんですよ。
そこに山があるから、多少の筋肉痛も酸欠も高山病もなんのその、ほいほいほいと鼻歌を口ずさみながら登り始めてしまう。登ってるうちにランナーズハイみたいになって、楽しくてしょうがなくなってくる。ふと我に返って下を見てみると、下界は遥か雲の下。そう、自分がマッキンリー級の山を登っていたことにちっとも気付かなかったのでした。
そろそろ山のてっぺんが見え始めています。なんということでしょう、登山の仕方はわかっても、下山の仕方はわからない。突然登るべき道を失って、わたしはまんじりともせず動けなくなってしまう。でもずっとそこにいるわけにもいかない、どうやったら下りられるだろう、そうだ、一番簡単な方法があるじゃないか。
身を投げてしまえばいい。
…あの、別に遺書とかじゃないので心配しないでください。これ、メタファーですから。