ハチミツとクローバー

まずは、こっちから。

ハチミツとクローバー 9 (9)

ハチミツとクローバー 9 (9)

なぜこの漫画がここまで胸を締めつけるのか、理由もよくわからぬままわたしは一喜一憂していた。だけど、

けれど 僕らは結局最後まで みんなで海に行く事はなかった

このフレーズを読んで、ああ、そういうことだったんだ、と少し霧が晴れた。
これは、あきらかに現在進行形の物語ではない。すでに彼らの手を離れ、思い出の中に封印されてしまった出来事たちのプレイバックであるということに、読み手は知らず知らずのうちに気づいて切なくなる。どうしようもなくなる。「読み手」とかって大風呂敷を広げたけれど、少なくともわたしはこの手法で確実に泣かされている。
それにしたってこの巻はシビアだ。急転直下のシビアさだ。失われた光る欠片に切なくなってる場合じゃない。こんな未来(過去の中だけれど)が待ち受けているなんて。胸がざわざわします。
さて、映画の方。ネタバレしますのでひとつよろしく。
わたしは試写会で観に行ったんだけど、上映後電気が点いてみんながひとしきりざわめいていたこの話題。
「なんであの猫CGなの?」
わたしも真っ先にそれを思った。最初修ちゃんとこで猫がミルクなめてるシーン、「なにこのモザイク…!?」ってよく正体がわからなくて怯えた。あとからあれは黒猫だと気づいたんだけど、どうしてよりによってあれをCGにする必要があったのか。まったくわからない。そればかり考えてしまって、せっかくの映画の余韻が台無しになってしまった。何で誰も異を唱えなかったのか。ああ、もったいない。
エンドロールを観るまで、脚本が河原まちゃぴこだということをすっかり忘れていた。あまりにも本人と映画の内容がリンクしなさ過ぎてアハハ。でも、よくできていたと思う。うまく2時間にまとめたな、というのかいちばんの感想。あのギャグをどうやって実写化するんだろうと思っていたけど、その辺はやっぱり映画のテイストを損なわないようにさらっとさせていた。そうだ、CG使うんなら森田さんに使えばよかったのに。
なので、森田さんはとてもまともな人間になっていた。9巻を読んでから観たら、もっと映画の森田さんになじめたかもしれないな。でも佇まいは森田さんそのもの、彫刻作ってるときの意外な体つきの良さにドキッとした。イセヤ、すてきだ。醤油で龍のエピソードが入っててうれしかった!ホントに描けるもんなのねー(感心)
そして優ちゃんがかわいすぎる。はぐすぎる。撮影技術の上手さなのか優ちゃんの努力なのか、たぶんどっちもだろうけど、優ちゃんがちっちゃく見えた。ふわっと笑うところなんて、本当にはぐの生き写し(※死んでません)みたいだった。きゅんきゅんしてしまった。優ちゃんファンはもれなく観に行くべきだ。
修ちゃんが案外出番多くてびっくりした。最初イメージ違うよ!って思ったけど、映画は映画の修ちゃんだと思ったらすごく腑に落ちてにんまりした。でももっとはぐとベタベタしてほしかった。もっと親バカっぷりを発揮してほしかった。はぐも修ちゃんに懐いていてほしかった。一度も「修ちゃん」ってはぐが呼ばなくて、ひとりでがっかりしてしまった…。
真山はやっぱりちょっとわたしのイメージと違う、というか、加瀬君があまりに細くてちょっとなあ〜と思ってたけど観ているうちに「ああ真山かも」と、森田さんとふざけてるシーンはおそらくプライベートでの仲の良さも手伝ってかとてもナチュラルで「ああやっぱり真山かも」と、次第に思うようになった。
山田さん、見た目が山田さんすぎる。もうちょっと男勝りなところを出してほしかったけど。真山から逃げ回るシーンは原作ぽくて笑った。スタイルいいなーってホントにうっとりした。
原田さんの田辺誠一、写真の中だけだった。びっくりした。すごい使われ方しとる!
藤原兄弟が画廊のオーナーになっていた。設定が変わっとるやんけ!どうしても出したかったんだろうなーニヤニヤ。でも予想を裏切らない最高の兄弟になっていた。
あ、忘れてた。竹本君。竹本君だったなあー。この人ずっとこの髪型だったらいいのに。はぐに一目惚れするシーン、ホントに漫画のシーンと重なって見えた。役者さんだなーって、今さらながら感心してしまった。そういえば獅童さんが車運転してるシーンあるんだけど大丈夫?というか、あそこはなかなかいいシーンだった。
お約束のところで何度もうるりときた。うるりときたんだから、原作の解釈を間違ってない証拠だ。制作側が全身で原作を愛しているという姿勢が伝わってくる。あのCG猫さえなければ、原作ファンにもなかなかいい映画だったとおすすめできる(エラそうだ!)気がするよ。あと、スピッツの「魔法のコトバ」がかかるシーンでやっぱり泣かされた。ずるいよー。
DVD買うまでではないけど、前売り買っちゃったからもう一度観に行こうっと。イセヤファンもこれは観といた方がいい、こういう映画になかなか彼は出ないから…。*1

*1:そういや同じ原作モノだけど全然別物になり果てているという「笑う大天使」にもイセヤ出てるんだよね…。原作を愛しすぎているので観に行く気が起きない…