空中庭園

空中庭園
出演:小泉今日子/鈴木杏/板尾創路/広田雅裕/ソニン/永作博美/大楠道代
監督・脚本:豊田利晃 原作:角田光代
秋、テアトル新宿ユーロスペースほか全国順次公開
http://kuutyuu.com/

角田光代の小説が初映像化。一足お先に見てきましたよ。

「青い春」の監督なんだそうだ。わたしは見てないのでわからないけど、全体に漂うひりっとした空気にそれらしさを感じる。角田さんの書く人間というのはどこかがひどく歪んでいて、それをどう映像で表現するのか興味津々だったんだけど、この監督はそれを見事にやってくれた。どこかがずれている違和感、ひそやかで時にあからさまな悪意、妄想……それらすべてが見事に具現化された世界、それはホラーだった。小説を読んでいるときに感じるあの腑に落ちない気持ち悪さ、そうか、やっぱりあれはホラーだったんだ。ラストとかキョンキョンがすごいことになっちゃう突拍子もないシーンだけど、話の筋から決してずれていない。普通の街並みが映っているだけなのに、なんだか居心地の悪さを感じるカメラワーク、鳴り響く雷鳴、貞子が出てくるのか…!?と身構えてしまいそうな回想シーン、すべてが彼女の世界を見事に表現している。こんなはずじゃなかったと怯えながら*1、それでもこんなやり方があったのかと監督の手腕に舌を巻いた2時間でした。
関西弁をしゃべらない板尾に最初は違和感を禁じ得なかったけど、情けない男っぷりが滑稽ですごくハマってて、でも愛があるってちゃんとわかる。最近映画に引っ張りだこなのもわかる気がする。キョンキョン、怖かった。この怖さは映画踊る大捜査線の「あなたの胃は健康?」と通ずるものがある。それにしても杏ちゃんとキョンキョンの親子なんて最強だ。広田レオナの息子、どっちかというと吹越さんに似てる。佇まいはちょっと松田龍平っぽいかな。佐藤浩市が叔父さんなんだってね!ど、どういうこと!?*2
原作はまだ全部読んでないんだけど*3、小説の世界よりもラストに救いがあるような気がする。想像の世界だけだと読み終わってもしこりが残り、軽くめまいを覚えながら本を閉じるんだけれど、映画では映像として提示されるから「ああ、救われた」とほっとできる。とはいえ、ふと冷静になって考えてみると基本的には何も解決されてないことに気付くんだなあ。ただその瞬間的な救いに目くらましされただけで、京橋家の問題は山積みだ。それを思うとよかったよかったでは終われない。映画が終わってからが物語の始まりです、誰かのそんな声が聞こえたような気がした。

*1:ピヨ丸は極度の怖がりです

*2:家系図がまったく見えません

*3:昨日の夜から読み始めた