それはただの着ぐるみです

新高輪プリンスのロビーの片隅で、特に照明が当てられているわけでも特設ブースができているわけでもなく、ちょっとしたお立ち台にひこにゃんが上り、周囲をカメラ野郎(ほとんどが30代以上の女性、おばあちゃん、カップルで子どもは2,3人しかいなかった)が取り囲んでひっきりなしにフラッシュを光らせているという異様な光景が繰り広げられていた。スタッフもマイクを通しているものの、ホテルのロビーだからか低めのトーンでぼそぼそとしゃべるという地味な感じ。そこに客の「ひこにゃーん」という目線を要求するかけ声が挟まる。

うひょっとするひこにゃん
これは別に撮影会というわけじゃなくて、彦根ひこにゃんに関するクイズ大会で、ひこにゃんが正解を○×の札で挙げるっていう形式で行われてたんだけど、客の回答方式が腕を○か×にして挙げるっていうそりゃあもうゆるい感じで、なんだかもうつっこみどころ満載でたいへん面白かった。正解者はひこにゃんから直々に彦根グッズ(?)をもらえるとあって、スタッフの出題の声が小さかった時に間髪入れずに「聞こえません!!」って声が飛んでこわかったよ……。近くにいた妙齢の女性が連れの男性に「ひこにゃんからじきじきにもらえるなんてたまりませんよね!!!」って力説していた。

客にもらった差し入れをうれしそうに見せるひこにゃん
着ぐるみに貢ぎ物をあげるという発想が皆無だったのですごいびっくりした。「ひこにゃーん、おみやげ持ってきたのー。おいしいお菓子よー。でも食べ過ぎて太らないようにねえ」わたしの前にいたおばあちゃんがひこにゃんにプレゼントを受け取ってもらおうとタイミングを計るのにずっとそわそわしていて、ひこにゃんこっち向いたチャーンスとばかりにやっと話しかけたその声がものすごい猫なで声でぞわっとした。その後も続々と「ひこにゃんプレゼント!!」って声があちこちから響き、とにかくいろいろともらいまくりのひこにゃん
なんなんだこの光景は。

礼儀正しく最後はお辞儀
帰るときにわたしのすぐそばを通ってくれたので思わず顔にタッチしてしまったんだけど、ひこにゃん想像以上にちっちゃい!!160センチないんじゃないだろうか。わたしと同じ目線の着ぐるみなんてはじめて見たよ!!
そしてはけていくひこにゃんを追いかけてフラッシュを光らせるギャラリー。まるで追いはぎのようだよ。
こんなにもひこにゃんはかわいいのに客が想像以上に痛すぎてひいた。わたしが見たのは12時からの回で、14時からのビンゴ大会も見るつもりだったけど、もういいやと思って帰ってきてしまった。まわりがヒートアップしすぎているのを見るとさめる性分がここでも発揮というか、ひこにゃんはもちろんかわいすぎて実物を見た喜びはひとしおなんだけど、なんというかもういいやというしょっぱい気分に……。
あまりの事態に中の人とスタッフに同情を禁じ得ないけど、これで彦根がだいぶ潤ってるんだもんなあ。日本はつくづくワンダーな国であることよ。