HYMNS

「HYMNS−ヒムス−」@青山円形劇場
構成・演出:鈴木勝秀
出演:佐藤アツヒロ 小松和重 みのすけ 永島克

3部作のラスト。つくづく「LYNX」を観てない自分を呪った。2年前、前作「MYTH」のヘボい感想はこちら→piyomaruko/20060525#1148572015
すばらしかった。
ロープを使った演出とステージの下からのぞく赤い光、永島さんの驚異的な長台詞、みのすけさんのあの一筋縄ではいかない感じ、小松さんの静と狂、そしてあっくんの“孤独”な佇まいに、とにかく痺れた。
かろうじて前作を観ているから、過程は違えど物語の結末をわたしは知っている。それにあらためて気づいたとき、どうしようもない切迫感を覚えた。全身白のあっくんと、全身黒の小松さん。こんなにわかりやすい自分の中の天使と悪魔の表現なのに、小松さんの道化師のような振る舞いが涙腺をくすぐる。ロープに阻まれてあっくんのそばに行けない、あのシーンで、わたしは胸の奥がずきんとした。わたしは彼に時折自分を重ね、時折あっくん自身を重ねた。あの澄んだ悲しい瞳は、さまざまな経験をミルフィーユのように限りなく重ねた彼だからこそ、できるものなんだろうと思った。
黒い自分は、何度殺しても起きあがるだろう。命を賭けてロシアンルーレットをして、極限状態に追い込まれながらやっとのことで相手の息の根を止めても、しばらくしたらまた現れて自分をそそのかす。その繰り返しだ。最後に明るい光が射しても、あの物語は決してハッピーエンドではない。しかし、抜け殻だった彼が黒い自分に向けて絞り出すあのひとことが、とてもまぶしかった。
あの表情、鬼気迫るというのともまた違う。演技の範疇を超えているような気がした。あっくんの過ごしてきた半生が導いた言葉のように思えて仕方なかった。
……ああ、いやですね。あっくん呼び。もう三つ子の魂なので、今さらアツヒロくんってなんか呼べないんですよ。真面目に書いてんのにあっくんあっくん言っちゃって申し訳ない。
というわけで、ほんとうに痺れたわけです。今回も濃密な1時間40分。しかし張りつめてるばかりじゃなくて、あっくんと小松さんのアドリブ合戦がちょう楽しかった!あっくんのシンプルでたまに天然なリアクションに小松さんがちょっとペース崩されてて楽しいったらないよ!小松さんの問いかけに何も答えずあっくん小松さんを凝視、っていうところがあって、「なんだよ!見るとかやめてよ!」って変な慌て方をしとりました。どこまでアドリブなのかわかんないけど、意外な組み合わせがかなり相性いいことに気づいてピヨ丸にんまり。みのすけさんは役柄上少なかったけど、永島さんの愛のあるアドリブもよかった。「んーんーんー」っていきなり言うから何かと思ったら、ポケットから携帯出して「もしもし」って……!口バイブ!!ひっくり返った。その後「告白してもらうにはどうすればいいって言ってくるんだけど、どうしたらいいと思う?」っていきなりあっくんにむちゃブリ。あっくん本気でちょっと考えて答えたら「そういう経験したことあるんだ」ってにやにやしながら返されて「違うよ!俺も顔赤くなってきちゃった」って言ってたのがかわゆかったです。まる。なんかみんなに愛されてんなーってのが伝わってくるような応酬で、観ていてほんとうに愉快でした。
しかしあれだ……やっぱりピストルの出てくる話は心臓に悪いよ。ただでさえ突然の破裂音に弱いのに、円形狭いから音近いしさ。びっくりしちゃうんだもん。撃つ直前に赤ランプとかつくような演出にしてくんないかな……(極度のチキンですがなにか