シェイクスピア・ソナタ

シェイクスピアソナタPARCO劇場
作・演出/岩松 了
出演/松本幸四郎 高橋克実 緒川たまき 松本紀保 長谷川博己 豊原功補 岩松 了 伊藤 蘭

シェイクスピアと岩松さん。わたしの胡桃大の脳みそで理解できるはずがない、でもたまきちゃんが出る。見たい。見たいけど、高い。諦めという名の電車に乗って窓の外を見ないように揺られていたら、新聞屋から折込が。「定価9000円を5千いくらに!」肝心の金額を忘れてしまったが、なんと値引き販売のお知らせがやってきたじゃないか。売れてないのか…さもありなん。裏はエレンディラだったよ。うれしくて切なくて、でもやっぱりうれしいので母親に「おかーたん、こーしろーのぶたいがやすくなっとる」とひらがなで告げたら「おかーさんも一緒に行く」との返答。FAXを新聞屋に送ったらしばらくしてチケットが届き、雨ざんざんの中いってきましたパルコ劇場。案の定空いとった。やはりセツナス。ネタバレはあまりしないが一応隠す。
岩松さんにしてはすごくわかりやすいお芝居だった。こんなにわかりやすくていいのかと戸惑った。もちろん最初は人物相関図が全然見えてこなくて、会話の端々をすくい取って点と線をつなげて行く作業が大変困難だった。本来のわたしだったら脳みそが大豆大*1なので早々とその作業を放棄するところなんだけど、会話が面白いので引き込まれた。惜しむらくは、わたしがシェイクスピア作品に造詣が深くなくてリンクを拾いきれなかったことだ。しかしキャラクターがどれも魅力的で、たまきさんには目尻がダダ下がりになり、豊原さんには口元がゆるむ。ラマンチャ師匠のこんな軽妙な語り口、今まで聞いたことない。びっくりした。声が高いときの声、そのしゃべり方、びっくりするほど息子に似ている。朧の森のライがいるのかと錯覚するほどだった。最初らしくないキャラクターに戸惑ったが、コント的な動作と重厚さを両立させ、どちらにも説得力を持たせるこの芝居力はすごいと改めて底力を思い知った。蘭ちゃんの演技がやたら芝居がかっていて、なんだかお尻がもぞもぞした。岩松さんなんてとくにナチュラル芝居だから、一緒のシーンとかものすごくむずがゆい。でもシェイクスピアを体現していると思えば不自然でもなく。ああ、それにしてもたまきちゃん。なんて美しくすばらしい。芝居の中で「背、高いですね」といわれていた。本当だ、ラマンチャ師匠と同じくらいだ。コメディエンヌっぷりも美しく面白く、ああ、そして彼女の声。強くて繊細でたおやかで。賛辞しか出てこない。豊原さん、舞台初めて?どんどん出たらいいと思うよ!すごくよかった。かっこよく、そして滑稽で。十文字的な要素も織り込まれていて楽しかった。カッツミーの、自然でおだやかで裏に少し腹黒さを覗かせるようなこの芝居、すきでたまらない。豊原さんと険悪になるシーンが秀逸だった。岩松さんだしカッツミーだしドラマの撮りも終わったし、絶対二宮観に来るだろうなと踏んでいます。目撃してもわたしに教えないでくださいくやしいから。*2

波の音が聞こえる。でも、それは風向きが変わっただけの話。全部を理解できたわけじゃない、雰囲気から読み取る部分が多いので、わからないこともたくさんある。でも、心に深く何かが残る素敵な芝居だった。「何か」を説明できないところに、米粒大*3の脳みそたる所以がある。

  • 人を愛するということは、願うこと
  • 誰かを好きになるということは、重い荷物を背負うこと

ラマンチャ師匠が言う。その場にひざをついて泣いてしまいたくなる。わたしの抱えていた苦しさはここにあったのかと、今まで見つけられなかった扉を開いたような気分になる。
観に行ってよかった。朝日新聞ありがとう。

*1:あっ ちっさくなった

*2:有名人チェックしたけど、グリングの青木さんと演劇評論家の扇田さんしか見つけられなかった…

*3:もっとちっさくなった